一般に人は地理条件、性別、年齢、社会階層、職業、思想や嗜好等を反映した服装を着用するが、それと同時に文化的に影響力のあるステータスを持つ人々が何か新しい、もしくはそれまでと違った衣服を着用し、他の人々がそれに追随しはじめた時、ファッションの流行は始まる。服飾の流行は全世界的に見られるが、法律や宗教、道徳等による服装規範が相対的に緩く、服装の選択肢も広い現代の西洋的な市民社会においては、その変動は特に激しく、またそれらの流行を利用した衣料品産業が巨大産業を形成している。最新のファッションに盲目的に追随する人は「ファッショニスタ」(fashionista)とか、ファッション中毒等と呼ばれる。また、ロラン・バルトによれば、さまざまなファッションを着て見せびらかすという営為の体系は、さまざまなファッション文をファッションの文法を用いて組み合わせるファッション言語とも見做せる[1]。流行したファッションの中には、以後も完全に一つのスタイルとして定着するものもある[2]。一方で、衣服は着用者の美意識をそのままあらわすものであり、個性を示す手段ともなっている[3]。着用する衣服は他者からの第一印象を決定づけるものであり[4]、これを利用して他者に自らの望むイメージを印象づけることも行われる[5]。この「流行への追随」と「個性の強調」は本質的に対立するが、どちらもファッションの根幹をなす重要な概念である[6]。